こんにちは。五十嵐です。

昨年、慶應義塾大学が手術の死亡率に影響する因子について、大変興味深い研究結果を発表しました。

この研究は、誕生日に外科医がより注意散漫になることや、手術をより早く終えようと急ぐことが原因で、パフォーマンスに影響があるのではないかという仮説を、米国の47,489人の外科医によって行われた980,876件の緊急手術を対象に分析しています。

報告によると、外科医の誕生日に手術を受けた患者の死亡率は、誕生日以外の日に手術を受けた患者の死亡率よりも1.3%増加していたそうです。

つまり、
「外科医が誕生日に行った手術の死亡率は、誕生日以外の日に行った手術の死亡率より高い」
ということです。

この内容には衝撃を受けました。手術の成功は技術に左右されるのは当然ですが、執刀医の内面的な部分によっても影響を受けることを意味するからです。しかも、誕生日という本人にとってポジティブなイベントにもかかわらず、手術結果にはネガティブに影響しています。そして、患者は手術日が執刀医の誕生日かどうかを知ることはできませんし、知ったところで手術日を選択するのは難しいでしょう。

本研究の著者らは、誕生日における手術を推奨しないのではなく、患者がいつ治療を受けても質の高い治療を受けられるように、注意散漫になりうる状況で勤務している医師に対するサポートのあり方を検討する必要があると述べています。

これはあくまで米国の医師を対象とした研究ですが、獣医療の現場にも同様のことがいえるのではないかと思います。外科のスキルアップと同時に執刀医を取り巻く状況や環境にも気を配ることが、動物にとって良い結果につながるかもしれません。

参照)
Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational studyBMJ 2020; 371 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m4381 (Published 10 December 2020)